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弁理士法人アイミー国際特許事務所

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IMY知財ニュース 2024年7月 特許年金制度の概要

1.特許年金について

 

「特許年金」という言葉を耳にしたことがある方は多いかと思います。「特許年金」とは、特許権を維持するために特許庁に支払う料金のことです。

特許権を“発生”させるためには、第1年~第3年までの各年分の特許料をまとめて納付するのですが、発生した特許権を第4年以降も“維持”したい場合、毎年、特許料を納付する必要があります(複数年分をまとめて払うこともできます)。このように、権利維持のための特許料は、各年分を支払う必要があるため、「特許年金」とも呼ばれています。

納付期限は“前年以前”とされており、少しわかりにくいのですが、たとえば、2024年7月17日が特許登録日の場合、2027年7月17日(第3年の最終日)までに第4年分を納付する必要があります。

 

 

2.期限の徒過について

 

うっかり納付を忘れて納付期限を過ぎてしまった場合であっても、期限から6ヶ月以内であれば納付が認められます(追納期間といいます)。上の例ですと、2028年1月17日までです。ただし、通常料金の2倍の額(特許料+割増特許料)を納付する必要があります。

 

 

3.権利の回復について

 

追納期間を過ぎると、特許権は原則として消滅することになります。しかし、追納期間内に納付をすることができなかった場合であっても、所定の条件を満たすことで消滅した特許権が回復する、と規定されています。所定の条件は以下のとおりです。

 

・追納期間内に納付しなかったことが「故意によるものではない」こと

・追納できるようになった日(※)から2ヶ月以内で、かつ、追納期間の経

過後1年以内に特許料+割増特許料を納付すること

(※通常、“期間徒過に気づいた日”と考えられるそうです)

・手続することができなかった理由を記載した回復理由書を提出すること

・回復手数料(212,100円)を納付すること

 

上記によれば、追納期間の経過後であっても、最長で1年以内は権利の回復が認められる可能性があります。

では、「故意によるものか否か」は、どのように判断されるのでしょうか。

特許庁のHPを見ますと、救済が認められない可能性がある事例、つまり、「故意に手続をしなかった」と判断される可能性のある以下の事例が挙げられています。

 

事例1: 社内検討の結果、権利維持不要と判断し年金未納→追納期間経過後、他社が消滅した特許権に関心→権利維持に方針転換し回復理由書を提出

 

事例2: 経営状況が厳しい→社員の雇用を優先し、特許権を維持しないと判断して年金未納→追納期間徒過後、経営状況が改善したので、特許権を維持するために回復理由書を提出

 

上記事例をみると、権利を維持するか検討した上で年金を納付しなかった場合は、年金未納が故意によるものと考えられるようです。

そうすると、個人の特許権者が自ら年金期日を管理していて、納付を単に失念していた場合は救済されるように思います。

一方、特許事務所等を通じて年金管理している場合、納付期日が近づきますと特許事務所から特許権者に連絡が行きますので、権利維持要否の検討機会があるため、救済は認められ難くなるように思います。

 

いずれにしても例外規定なので、当てにすることなく、本来の納付期日について細心の注意を払って管理することが肝要です。

 

(参考)特許庁HP:https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/kyusai_method2.html

 

 

補足:米国について

 

米国でも、追納期間中の特許年金未納により消滅した特許権の復活が認められています(権利回復申請といいます)。簡単にご紹介します。まず、条件は以下のとおりです。

 

・申請費用を納付すること

・未納の年金を納付すること

・年金未納が故意でないこと

 

上の条件をみると、日本とかなり似ています。しかし、日本と大きく異なる点は、申請に期限がない、ということです。したがいまして、特許権自体の存続期間(出願から20年)以内であれば、いつでも申請することが可能です。

ただし、追納期間から2年以上経過した申請については、未納が故意でないことを示す追加の情報の提出を求められます。つまり、2年以上経過すると、復活するためのハードルがあがると言えます。

 

追納期間後から数年経過して特許権が復活する可能性がありますが、特許権が消滅したと思ってその特許発明を実施していた第三者にとって、いきなり特許権が復活して特許権侵害とされるのは不合理です。

そこで、追納期間後から権利回復までの間に、発明を実施した第三者に対し特許権者は権利を行使できず、第三者には「引き続きその特許発明を実施する権利(=中用権Intervening rights)」があるとされています。ただし、この中用権が、どの範囲でどの程度認められるかは、個別に判断されるようです。

 

(T.A記)